I
(1)五十音図ア行第四段の仮名。 五十音図ヤ行第四段の仮名としても重出。 前舌の半狭母音。
(2)平仮名「え」は「衣」の草体, 片仮名「エ」は「江」の旁(ツクリ)。
〔平安時代初期までは, ア行のエとヤ行のエとは発音上に区別があり, 仮名もそれぞれ別のものが用いられた〕
II
(感)
(1)驚いたり疑問に思ったりした時に発する語。 えっ。

「~, 今日は休みか」「~, ほんとかい」

(2)肯定や承諾の気持ちを表す語。 ええ。

「~, そうです」

(3)喜び・悲しみなどを深く感じて発する語。 ああ。

「鮎こそは島傍(シマヘ)も良(エ)き~苦しゑ/日本書紀(天智)」

III
(格助)
(格助)
IV
(終助)
〔上代語〕
文の末尾に添えて, 感動の心持ちを表す。

「山の端にあぢ群(ムラ)騒ぎ行くなれどわれはさぶし~君にしあらねば/万葉 486」

V
(間投助)
〔上代東国方言〕
体言に付いて, 呼びかけを表す。

「父母(トチハハ)~斎(イワ)ひて待たね筑紫なる水漬く白玉取りて来(ク)までに/万葉 4340」

VI
(間投助)
〔近世以降の語。 前期上方語では町娘や遊女などが用いたが, 後期江戸語では男性にも用いられた。 現在では老・中年層の女性の間に残っているだけで一般にはあまり用いられない〕
(1)文末に用いられる。 (ア)質問・反問の意を強める。 多く「かえ」「だえ」の形をとる。

「どうしたんだ~。 元気がないよ」「ご苦労だけどそうしておくれか~」「おやなぜです~。 なぜ親友の交際が出来ません~/浮雲(四迷)」(イ)念を押したり, 語気を強めたりする気持ちを添える。 「むむ, いいわ~。 こいつは一ち番しめるだろう/滑稽本・八笑人」

(2)文中の名詞・感動詞に付いて, 呼びかけを強める。

「もし~, 藤(トウ)さん, よしてもおくんなはいよ/人情本・梅児誉美(後)」

VII
え【上】
(上)
VIII
え【会】
〔呉音〕
集まること。 主に仏事や祭りの集まりをいう。

「御堂の~/栄花(本の雫)」

~に逢(ア)わぬ花(ハナ)
〔法会などに間に合わない花の意〕
時期におくれ役に立たないもののたとえ。

「今は何の用にかあふべき。 ~, 六日の菖蒲/平家 11」

IX
え【兄】
兄弟・姉妹のうち, 同性の年長者。 年長者。 年上のもの。
「いや先立てる~をし枕(マ)かむ/古事記(中)」「蘇我倉山田麻呂が~女(ヒメ)/日本書紀(皇極訓)」
X
え【役】
課役。 夫役(ブヤク)。 えだち。 「役調(エツキ)」「役丁(エヨボロ)」など, 他の語と複合した形でみられる。
XI
え【得・能】
〔動詞「う(得)」の連用形から〕
(1)下に否定の表現を伴って, 不可能の意を表す。 …できない。 全く…しない。

「帝, はた, まして~忍びあへ給はず/源氏(桐壺)」

(2)下に肯定の表現を伴って可能の意を表す。 できる。

「其の暴浪(アラナミ)自(オノズカ)らなぎて, 御船~進みき/古事記(中訓)」

XII
え【恵・慧】
(1)知恵。 さとり。
(2)〔仏〕 真理を見通す心のはたらき。 智慧。 般若(ハンニヤ)。

「戒・定・~の三学を兼備し給へる独(ヒトリ)の沙門おはしけり/太平記 2」

XIII
え【愛】
名詞に付いて, 愛すべき, いとしい, の意を表す。

「あなにやし, ~をとこを/古事記(上)」

XIV
え【故】
〔「ゆえ」の「ゆ」が他の語と複合して脱落した形〕
「ゆえ(故)」に同じ。

「思ふ~に逢ふものならば/万葉 3731」

XV
え【方】
〔名詞「へ(辺・方)」から〕
名詞, または動詞(ときに一部の助動詞)の連体形に付いて, 場所・方向・時間を漠然と示す。 …のあたり。 …の方(ホウ)。 ころ。

「しり~」「ゆく~」「いにし~」

XVI
え【枝】
えだ。

「梅が~」

XVII
え【柄】
〔「枝(エ)」の転とも〕
(1)手で持ちやすいように, 器物につけた細長い部分。 取っ手。

「傘の~」

(2)きのこのかさを支える部分や葉・花・果実を茎や枝につけている部分。
~の無い所に柄をすげる
無理に理屈をこじつけること。 また, 難くせをつけることのたとえ。
XVIII
え【榎】
エノキに同じ。

「我が門(カド)の~の実もり食(ハ)む百千鳥/万葉 3872」

XIX
え【江】
(1)海・湖などが陸地に入りこんだところ。 入り江。 湾。
(2)海。 大河。

「~の神河の神有りて/今昔 3」

XX
え【疫】
悪性の伝染病。 えやみ。

「これは世の~にはおはしまさず/大鏡(道長)」

XXI
え【絵】
〔呉音。 「画」とも書く〕
(1)物の形・姿を描いたもの。 絵画。

「~をかく」

(2)映画・テレビの画像。
~に描(カ)いた餅(モチ)
役に立たないたとえ。 計画などが実現する可能性のないこと。 画餅(ガベイ)。
~に描(カ)いたよう
(1)美しいことのたとえ。

「~な夕日の美しさ」

(2)ある事柄や状態の典型であることにいう。

「けちを~な人」

~にな・る
(1)絵にかいたならば良い絵になりそうな, 姿・形・場面・景色である。
(2)姿などがその場の雰囲気にぴったりと合っている。
~の事は素(シロ)きを後(ノチ)にす
絵事(カイジ)は素(ソ)を後にす
XXII
え【肢】
〔身体の枝の意〕
手足。

「来目部をして夫と婦の四の~を木に張りて/日本書紀(雄略訓)」

XXIII
え【胞】
胎盤。 胞衣(エナ)。

「同じ~にして双(フタゴ)に生(ア)れませり/日本書紀(景行訓)」

XXIV
え【荏】
エゴマの古名。 [和名抄]
XXV
え【重】
助数詞。 重なったもの, 重なった回数をかぞえるのに用いる。

「二~まぶた」「八~桜」

XXVI
え【餌】
えさ。

「鶏に~をやる」「まき~」


Japanese explanatory dictionaries. 2013.

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